発達障害を進化させるために脳のしくみを知る

通説によると、発達障害は先天的な脳の機能の障害とされています。

私自身は「障害」と呼ぶことはあまり好きではないのですが、この特性ゆえに現代社会では楽に暮らしにくいのは事実ですから、そのような意味では脳のつくりが障害になっていると認めざるを得ません。

じゃあ、どうすればもっと楽に暮らせるようになって、しかも発達障害ゆえの優れた能力を十分に発揮できるのでしょうか?

問題が脳の機能の違いから生じているわけですから、第一に考えるべきは「脳へのアプローチ」です。

でも、脳に働きかけるといっても、何をどうすればよいのでしょうか?何が効果的なのでしょうか?

それを理解するには、まず生物としてのヒトの脳がどのようなしくみで成り立っているのかを知っておくことが第一歩となります。

このしくみを理解するなら、発達障害の様々な特徴、例えば、感情のコントロールが苦手だったり、言葉で気持ちをうまく伝えられないということがなぜ起きてくるのか、その理由が分かります。

ですから、親としては子どもの行動の理由が分かるので、ついイライラしてしまう場面でも冷静さを取り戻しやすくなります。

「なぜ?」「どうして?」と答えを求めて、不毛な自問自答を繰り返さなくて済むわけです。

また発達障害の脳に対する最も効果的な働きかけが分かりますから、状況に応じて臨機応変に適切な声かけをしたり、サポートのためのアイデアも生まれやすいわけです。

ヒトの脳は3つのレベルで構成されている

ヒトの脳は幾つかの部分に分かれており、それぞれの部分に役割があるというということはご存知かもしれません。

例えば、左脳と右脳に分かれていて、左脳は計算や言語や論理が得意、右脳は感覚的なことやアイデアに強いなどと言われます。

そして、特に発達障害との関連で重要になってくる脳のしくみは3つの脳という学説です。

この説によれば、以下の図のように人間の脳は、爬虫類脳・哺乳類脳・人間脳の3つの部分に分かれているとされています。
3つの脳

この図のように、頭の一番奥まったところに、まず爬虫類脳が存在し、それを包み込むように外側に哺乳類脳があります。そして、それをさらに包み込むように人間脳と言われる部分が存在しているのです。

実はこの3つの脳の位置というのは、ヒトの脳機能の発達の段階とそのまま一致するのです。

つまり、一番最初に発達するのが、爬虫類脳と呼ばれる脳の深部の脳幹(古皮質)の部分です。

この部分は、本能的な欲求を担当しており、食べること、寝ること、子孫を残すことなど、ただただ生存するために必要なことにフォーカスして働く脳の部分です。

次の段階として発達する脳は、哺乳類脳です。

これは大脳辺縁系(旧皮質)という部分が担当します。

犬や猿などの哺乳類は、爬虫類とは異なり、一定の感情のようなものを持つと言われています。もちろん人間ほどの複雑な感情ではないかもしれませんが、ペットの犬やネコに何となく気持ちが通じ合うように感じることはありますよね。

また我が子を助けるために捨て身でライオンの群れに立ち向かうゾウの母親や何年も主人の帰りを待つ犬の話など、そこには単なる生存のための欲求を超えた行動の原動力があると思わずにいられません。

そして、こうした情動や感情の働きをヒトの脳内で担うのが哺乳類脳というわけです。

脳の発達段階の最後は人間脳です。

人間はこの部分が他の動物とは異なり極めて発達しているからこそ、思考し、創造することができます。このような高次元の働きが可能な人間脳は大脳新皮質と呼ばれる脳の一番表層の部分に存在します。

特にその中でも中枢となるのは、前頭前野(前頭前連合野)です。

3つの脳の支配関係

爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳の3つの脳は、どれが優れているとか劣っているということはなく、どれもヒトが生きていくために不可欠な働きを担っています。

それでも支配力ということでいえば、外側にある脳の方は内側の脳をコントロールする力が強いと言えます。

つまり、人間脳>哺乳類脳>爬虫類脳の順に支配力が強いわけです。

ですから、内側の脳が「うわぁ~甘いもの大好き~いっぱい食べたぁい」と欲しがったとしても、人間脳が「いやいや今ダイエット中でしょ!我慢我慢」とブレーキをかけることも可能です。

でも、「やっぱり今日だけは食べちゃおう」と内側の脳の欲求が勝つときもあります。

ですから、外側の脳の支配力は絶対的に強いわけではなく、時と状況によって支配力の強弱に差がありますし、個人差もあります。

ただ発達障害の人の場合は、特に外側の脳の支配力が個人差の範疇を越えて極端に弱いことが考えられ、それが様々な問題行動へとつながる場合があります。関連記事:発達障害は人間脳を強化することで進化する

興味深いことに、3つの脳の発達段階はそのまま進化論で言うところの生物の進化の過程と一致します。魚・爬虫類→哺乳類→人類という進化のレベルが、ヒトの脳の発達段階と同じなのです。

実際、人間の胎児はママのお腹の中で生物の進化の段階を経てから人間の赤ん坊として生まれくるそうです。確かに妊娠初期の頃の胎児の写真見るとしっぽのようなものがついていますよね。

このようなことから発達障害の人は、人間脳を強化することがすなわち進化につながるのであり、今の生活に何らかの不自由さを感じているのであれば、その解決の鍵が人間脳にあるかもしれないといえるのです。

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